2周年イベントとして、女性の精神科医・心療内科医をお招きして、女性の視点から「心の病気」をとらえ、現在の精神科・心療内科医療の問題点や、フェミニストカウンセリングとの接点を探求しました。
以下、シンポジストのお話を簡単にまとめました。
(竹下小夜子さん)
「精神科の治療は、精神療法(面談)・薬物療法・生活療法の3つがあり、薬物療法がどうしても必要な場合が
ある。カウンセラーが心理主義的な見方で踏み込みすぎる危険性を認識しておく必要もあり、カウンセラーと医師の連携が大切。女性の精神的な病の大半に、自分自身であることと性役割の間での「引き裂かれ」が存在しているが、伝統的な精神医療はそれに対応できず、むしろ専門知識の偏見や嘘が障害になっている、個々の臨床より社会システムを変えることの重要性を感じている。」
(竹下さんは、米兵による少女レイプ事件を契機として設立された民間団体「沖縄強姦救援センターREICO」の
代表を務めておられます。警察など公的機関との連携協力体制を含めた活動の概要についても紹介していただきました。)
(藤田光恵さん)
「心療内科は細分化された現代医学のアンチテーゼとして登場した。心身医学の立場から、総合的に病気をみようとする新しい分野で、心因性の身体症状(いわゆる心身症)を扱う分野と定義できる。堀川病院では受診患者は女性が男性の約2倍に及ぶ。女性と心身症のかかわりについて、10~20代の摂食障害、
「女の幸せ」のイメージとは裏腹に大きなストレスとなり危機をもたらしやすい結婚、
50~70代の家族関係の変化や身体への不安、介護負担など、女性に不利な社会・文化的な要因が大きく影響している。また医療体制の問題点としては、精神科と心療内科のつながりが弱いことや医師の社会そのものが男性中心で、
女性の視点が欠けているのが現状である。」
(井上摩耶子)
「
カウンセリングは、診断を下し治療するという立場に立たないことが、まず第一に医療との相違点である。カウンセリングではクライアントの悩みや苦しみを、他者との関係性のなかで生じる自他の欲求のぶつかりあいとして捉え、あくまで他者との関わりのなかでの解決をめざす。特にフェミニストカウンセリングは、アメリカのフェミニズム運動における意識覚醒(CR)グループから生まれたもので、personal
is
politicalのスローガンに表されるように、社会変革の意識が強い。家父長家族あるいは家父長制社会のなかでパワーを奪われている女性たちを力づける(エンパワー)ことこそがフェミニストカウンセリングであると。また精神科や心療内科との連携をめぐる問題として、権威者としての男性専門家と女性クライエントの関係性が問題である。」 |